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生まれ変わったJava !? 『Java SE 8 実践プログラミング』を読みました!!

みなさん!Javaで開発してますか〜!! 

2014年3月に正式リリースされたJava 8 ではラムダやストリーム、平行処理の機能強化に加えて、JavaFXやNashorn JavaScriptエンジンなど、様々な興味深い機能が追加されました。昔からJavaに携わってきた人間としては、本当に幅広く実用的な言語になったな~と思います。僕の書斎のJava関連本も大分増えました!

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今後はJava 8 を用いた開発プロジェクトも増えてくるでしょう*1。そこで、Java 8 関連の技術を習得すべく、『Javaプログラマーなら習得しておきたい Java SE 8 実践プログラミング』を読みました!

Javaプログラマーなら習得しておきたい Java SE 8 実践プログラミング

Javaプログラマーなら習得しておきたい Java SE 8 実践プログラミング

 

本書の特徴としては、まえがきに書かれているとおり、既にJavaを習得している技術者が手短にJava 8 の機能を網羅的かつ簡潔に学習することを主眼としています。

この本では、すでにJavaをよく知っているプログラマーに対して、Java 8の多くの新機能を簡潔に説明します。(p.xi)

この本は「短気な(impatient)」スタイルで書かれています。...手短に要点を説明したかったのです。(p.xi)

必要なときにいつでもすばやく参照できるように、小さな単位で技術情報を解説しました。(p.xi)

その為、

  • 業務でJava 8 を使うことになったから、Java 8 の新機能を抑えたい
  • 今後の為に、とりあえず一通りJava 8 の機能に触れてみたい

といった方に最適な書籍だと思います。

また、コードサンプルも豊富に用意されており、各章の章末には豊富な練習問題も用意されていますので、

  • 開発時にリファレンスとして参照する
  • 読書会・勉強会などで活用する

などの使用方法もいいかと思います。

 

第1章ではラムダ式、第2章ではストリームAPI、第3章ではラムダ式を使ったプログラミング、そして第6章ではラムダ式と関連の深い並行処理の機能強化について記載されています。 まず、ラムダ式周りの機能を習得したい方は、第1〜3章と、第6章を読めばいいでしょう。

第5章では日付と時刻の新たなAPI、第8章ではその他のJava 8 機能について記載されています。Java 8 を用いた開発を行う場合は、こちらも読んでおいたほうがいいと思います。

第4章にはSwingに変わる新しいGUIとしてJavaFX、第7章はRhinoに代わる新しいJavaScriptエンジンのNashornについて記載されています。この章は興味に応じて読めばいいかと思います。

また、Java 7 で追加された機能の復習が、第9章に記載されています。Java 7 で機能拡張された内容を記載している書籍は少ないので嬉しいですね。

以下、 各章の内容を僕の感想交えて紹介します。

 

第1章 ラムダ式とは

第1章では、ラムダ式とインタフェースのデフォルト実装について記載されています。ラムダ式は、関数型インタフェース*2の無名実装の簡易構文(シンタックスシュガー)と考えると分かりやすいですが、実際のそれとは微妙に異なります。例えば、

ラムダ式の本体は、ネストしたブロックと同じスコープを持ちます。(p.17)

その為、ラムダ式とインタフェースの無名実装ではthisの扱いが異なります。また、Java 8 ではインタフェースにデフォルト実装を持つことが出来ます*3*4。これにより、

デフォルトメソッドは、CollectionとAbstractCollecction、あるいは、WindowsListenerとWindowsAdapterといった、インタフェースとそのインタフェースのほとんどすべてのメソッドを実装している抽象クラスを提供するという古典的なパターンに終止符を打つことになります。(p.19)

とあるように、既存の(慣れ親しんだ)API設計手法が変わります。古いJavaしか知らない方については、まずは第1章に目を通すだけでも、Javaに対する認識が大分変わってくるのではないかと思います。

 

第2章 ストリームAPIの使い方

第2章では、ストリームAPIの使い方が説明されています。

ストリームは、Java 8で導入された重要な抽象化概念です。(p.27)

とあるとおり、Java 8 を使いこなすには、ストリームの考え方をしっかり理解することが重要です。ストリームついては、p.29に記載されている、

  1. ストリームの作成
  2. 中間操作の指定
  3. 終端操作の適用

の3段階の操作でパイプラインを設定するという説明が分かり易かったです。

ストリームは最近の流行である、関数型プログラミングの概念を取り入れられて設計されています。本書では、

ストリーム以外のクラスにもflatMapメソッドがあるのを発見するかもしれません。それは、コンピュータサイエンスにおける一般的な概念です。...flatMapを使用して、最初にfを適用し、それからgを適用します。これは、モナド(monads)理論の重要な考えです。しかし、心配する必要はありません。モナドについて何も知らなくてもflatMapは使えますから。(p.33)

 とあるように、関数型プログラミングに対して深くは言及していません。

また、Optional型についてもこの章に記載されています。Optional型は値をnull安全に扱う為の重要なプログラミング技法です*5。今後のJavaフレームワークやライブラリでは、値がない可能性があるものは、nullではなくOptional型として取り扱われていくことになるでしょう。また、APIデザインを自分で設計する際には、そのように設計することが重要となります。

そもそもなぜOptional型がストリームAPIの章に記載されているかというと、Optiona型はストリームとして捉えることが出来るからです。

オプション値を大きさ0か1のストリームだと単純に想像してください。その結果は、大きさが0か1であり、1の場合に関数が適用されています。(p.38)

第2章を理解するだけで、Java 8 のストリームを十分使えるレベルになると思います。ただ、僕個人としては、関数型プログラミングは別途違う書籍で勉強したほうがいいと思います。というのも、最近の言語は関数型プログラミングのエッセンスを取り入れていますし、それを勉強することでストリームの理解がより深まると思うからです。

 

 第3章 ラムダ式を使ったプログラミング

 第3章ではラムダ式と関数型インタフェースを活用したプログラミング手法について記載されています。出てくる用語として、「遅延実行」「関数のパラメータ」「関数を返す」「合成」と、より関数型プログラミング色が強い章となっています。

 関数型プログラミング言語では、関数はファーストクラス・シティズン(first-class citizen)です。つまり、メソッドに数値を渡したり、数値を生成するメソッドを持つことができるように、引数や戻り値を関数にできるということです。これは、抽象的に聞こえますが、実際には非常に役立ちます。ある意味、Java関数型プログラミング言語ではありません。なぜなら、関数型インタフェースを使用するからです。しかし、原則は同じです。(p.65)

ラムダ式を使ったプログラミングでは、差分プログラミングが主流となると思います。つまり従来の手続き型言語とは異なり、制御の反転(Inversion of Control)の中で、「どのように処理するか」ではなく「何がしたいか」の差分をラムダ式で記述する機会が多くなるでしょう。

関数型インタフェースとして操作を表現する場合には、呼び出し側は、処理の詳細を制御することをあきらめます。(p.70)  

また、本章では、ラムダ式を使った一通りのプログラミング手法に加え、

 について記載されています。

一般に、ラムダ式は、ジェネリック型と相性がよいです。(p.74)

 とあるように、ラムダ式を活用するとジェネリック型を意識することが多いです。特に関数は、入力と出力を扱うという特性上、型変位(引数型には反変、戻り値には共変)を意識する必要があります。ジェネリック型について知識が曖昧な方は、この機会に復習しておいたほうがいいでしょう*6

 

第4章 JavaFXによるGUIプログラミング

本章ではJavaFXによるGUIプログラミングを一通り説明しています。

JavaFXだけでおそらく1冊の本が出来てしまうので、本章で全てを学ぶのは難しいと思います。ただ、触りとしては十分な内容でしょう。特にバインディングはMVVMを用いた設計では重要な技術となりますので、知らない方はバインディングの楽しさに触れてみるのがいいかと思います。

また、JavaFXに関しては、開発ツールのScene Builderがとても優れているので、一度ダウンロードして試してみるといいかと思います*7

 

第5章 日付と時刻の新たなAPI

時刻は絶対基準のある値(ある特定の時間からどれくらい経過したか)でありながら、歴史、宗教、機械の制限、地球の揺れによる誤差やロケーションの違いなどから、正しく扱うのがとても難しいデータとなっています。

Java ではこれまで、Date、Calendarクラスで時刻を現していましたが、閏年サマータイムなどの問題を取り扱うことが出来ませんでした。そこで、Java 8では新たなAPIが用意されました。この章では、そのAPIの詳しい説明がされています。

  • ある時点を現すInstant
  • 二つの時間の差を現すDuration
  • タイムゾーン情報を持たないLocalDateTimeと持つZonedDateTime
  • SimpleDateFormatに代わる日付フォーマットクラスのDateTimeFormatter

などなど。

また、古いコードとの相互運用についても「5.7 古いコードとの相互運用」に記載されておりますので、リファレンスとして用いやすい章となってます。2000年問題に携わった人間としては、このようにAPIがあの時あればな〜と想いを馳せます。

 

第6章 並行処理の機能強化

Java 8 はラムダ式ばかり取り上げられることが多いように思いますが、そもそもラムダ式が導入された背景には、「マルチコアに対応して、効率よく平行プログラミングできるように」という目的があります*8。本章では、平行処理の機能強化について記載されています。

この章を読むには、スレッドや並行処理の基本が分かっていないと辛いでしょう。本章では、ラムダ式を用いたサーチ(search)や畳み込み(reduce)の話が出てきます。例えば、畳み込みでは順序に左右されない累積関数の重要性などが記載されています。

一般に、操作は、結合的(associative)であり、可換(commutative)です。すなわち、最終結果は、中間の値が組み合わされる順序に依存していないということです。(p.142) 

デフォルト値は、累積での中立要素*9でなければなりません。(p.149) 

つまり、累積関数funcは、

  • func( 中立要素, x ) の結果は、 x と等しい
  • func( x, 中立要素 ) の結果は、 x と等しい
  • func( func(x, y), z ) の結果は、 func( x, func(y, z) ) と等しい

ことを満たす必要があります*10。 

ストリームを並列化しても、それが正常な結果を返すかどうかはプログラマーの責任となります。僕は本章を読んだだけですが、どこかのタイミングで実際に大量データを用いた並行処理の実験をしてみたいと思いました。

また、完了可能フューチャーを用いた非同期操作やその合成方法についても記載されています。CPUを効率よく活用して、大量トランザクションを処理するには、フューチャーを用いたプログラミング技法もますます必要性を帯びていると思います。

 

第7章 Nashorn JavaScriptエンジンの活用

Java 8ではRhinoに代わりNashorn JavaScriptエンジンが提供されました。

知りませんでしたが、Java 8にはjjsと呼ばれるコマンドラインツールが含まれているらしいです。

$ jjs

jjs > 'Hello, World'

Hello, World 

Hello, World!'.length

13

 REPL環境として、便利ですね!JavaのREPLも早く提供して欲しいです。また、

jjs -scripting

として起動することで、バッククォート内にシェルコマンドを含めることでシェルコマンドを実行することが出来るらしいです。

`ls -la`

業務ではWindows Serverを扱うことが多く、Groovyでスクリプトを書く事が多かったのですが*11JavaScriptスクリプトを書く選択肢が出来たのは非常に嬉しいです。JavaScriptから、Javaオブジェクトを簡単に扱えるのもいいですね!

一通りのNashorn JavaScriptエンジンの使い方が記載されているので、フロントサイドでも活躍するJavaエンジニアには、本章はとても楽しい内容ではないかと思います。

 

 第8章 その他のJava 8 機能を理解する

本章では、微妙に嬉しいその他のJava 8 機能を紹介しています。純粋にString.join メソッドは嬉しいですね。その他にも微妙に役立つ変更が紹介されておりますので、一通り目を通すのがいいと思います。

 

第9章 Java 7 の機能を復習する

Java 7 は、Java 8 に比べるとかなり地味なバージョンアップですので、見落としがちな便利な機能がいくつかあります。本章では、そういった機能の為の復習が用意されており、Java 7 機能を理解したい場合は、本章だけを読むというのもありだと思います。

僕が一番嬉しい機能としては、Java 7 ではFileを簡単に扱う方法が提供されました!

JavaではGroovyのようなスクリプト言語と比べて、ファイルを扱うにはとても増長な記述が必要な言語でした。Java 7 では、以下のように簡潔に書く事が可能なようになります。

for (String s : Files.readAllLines(Paths.get("/tmp", "hello.txt"))) {
    System.out.println(s);
}

 まあ、Groovyならもっと直感的に書けますが、、

println(new File("/tmp/hello.txt").text)

書籍『APIデザインの極意』にもありましたが、簡単な事を簡単に扱えるAPIを提供することは重要です。そういう機能が提供されただけでも喜ばしいです*12

また、 try-with-resources 文などは地味に便利な機能なので、知らない方はしっかり押さえておくのがいいと思います。

 

まとめ

 Javaは、Java 8 で生まれ変わりました。ラムダ式を筆頭に、Coolな拡張がされています。ラムダ式ばかりが取りざたされている印象がありますが、細部にわたって良い改善がされています。

Java 8 のバージョンアップを通じて、Javaはこれからも変わっていく、変わりつづけていけるとのメッセージを受け取ったように感じました。古いJava で知識が止まっている方、いまだJava 1.4 で消耗している方は、一度この本の1章だけでも目を通して見ればいいのではないでしょうか!

*1:Java 7は2015年4月に公式アップデートが終了されますし。

*2:単一の抽象メソッドをもつインタフェース

*3:インタフェースにデフォルト実装をもたせた理由は、既存資産への後方互換性をサポートするためです。書籍『APIデザインの極意』の6.6に発展の視点から既存のインタフェースへのメソッド追加は困難である旨が記載されています。それに対する解決策として、Javaにデフォルト実装という機能が追加されました。

*4:p.21に記載されていますが、スーパークラスメソッドとインタフェースのデフォルメソッドが衝突した際、「クラスが優先」となります。これはJava 7 とのソース互換・機能互換維持のためです。ここからも、Java後方互換を如何に大事にしているのが分かりますね。

*5:NullPointerExceptionはJavaで一番有名な例外ですからね!

*6:僕も反変と共変の知識が怪しかったので、『Java 2 Standard Edition 5.0 Tiger―拡張された言語仕様について』で復習しました。

*7:僕はInteliJ IDEAとのScene Builderの組み合わせで使ってみましたが、とてもいい感じです。

*8:訳者まえがきの最後に「マルチコア時代へ向けた新たな道具を獲得することに、この翻訳本を役立てていただければ」という記載もありますしね。

*9:数値なら0、文字列なら空文字、リストから0サイズのリストなど。

*10:はい、モノイドですね。

*11:DOSバッチを書きたくないので。。

*12:個人的にはPathやFilesの追加は好きではありません。Fileに加えてPathという新たな概念が誕生し、操作がFilesに分かれているからです。後方互換の関係上、仕方ないことだとは思いますが。